循環、再生、自然への回帰 [社会]
原発の安全神話が崩れ、自然エネルギーへの回帰が叫ばれている。自然が突き付けた不遜な人間社会の技術と文明への警鐘であろうか。
脱原発、反原発を言うのは容易である。反対を叫ぶのであれば、その先にある対案を示し、伴う痛みや犠牲を受け入れる覚悟を持たねばならない。
際限なき欲望が、環境破壊を生み出し、帰るべきところを見失った。京都、竜安寺の石庭には縁側からは見えない石がある。吾々が見失った「足るを知る」心なのかもしれない。
我々の生活は、すべて始まりがあって、さなか、終りがある。時間を直線の延長と考えると、ここから逃れることは出来ない。
今、環境破壊の時代が求めるものは、自然の循環、再生、そして共生である。 帰るべきところはあるのだろうか。
西暦は、紀元前から始まって、今、20012年である。時間は営々と続くが、戻ることはない。
かって、有吉佐和子さんは、「長い人生を営々と歩んで来て、その果てに老婆が待ち受けているとしたら、人生は何のために生きたことになるのだろう」と言った。
しかし、である。
月は、生まれ、満ち、欠け、そして再び生まれ、満月の輝きから欠けて、循環する。
干支の時間軸は、12年で生まれ年が一巡し、60年で還暦になる。時間を循環、再生として考えるのだという。
還暦で、赤いちゃんちゃんこを着るのは、生まれた年の干支に戻り、赤ちゃんに還るという意味らしい。
終わりではなく、再生、新たなる挑戦のお祝いであろうか。
二十四節季を含む旧暦は、こうした考えに基づいているという。
太陽と月の運行を組み合わせた太陰太陽暦は、季節を知る二十四節季と月のリズムによる「こよみ」である。
旧暦は、つきごよみ、ともいう。人間の生命のリズムは潮の満ち干に律せられているという。
春の「おぼろ月夜」に菜の花が揺らぐ。季節を知り、時がゆったりと流れる暦である。
天気予報の解説では、一月(睦月)の小寒から12月(師走)の冬至まで春夏秋冬を二十四の季節の区切りで知らせる。
ちなみに、12月、月齢は師走、二十四節季は、大雪、冬至である。先人たちの残した情緒ある季節の言い伝えである。
吾々のDNAに刻まれた遠い海の記憶がある。太古の海に誕生した生命体が、陸に上陸する前、一億年の間、海と陸の狭間の渚で、波のざわめきと月の満ち干の中で暮らしてきたという。
赤子は、母の胎内で十月十日、渚のざわめきを聴き成長する。潮風と渚のざわめきに懐かしさを感じる遠い海の記憶である。(三木 成夫、胎児の世界より)
旧暦では、毎月、一日が新月、十五日が満月で、満月は東、半月は南、三日月は西の空にみえる。 満月と新月は、海では大潮になるという。
かってNHKの天気予報で、倉島厚さんは、しばしば「二十四節季」に触れられた。虹の仕組みや空の青さについても一言解説されたお天気キャスターであった。
天気予報や俳句などに、今でも使われる旧暦は、めぐりゆく季節と時が、ゆっくりと流れる循環、再生の貴重な”こよみ”である。
参考図書
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