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正直とは、再び [社会]

 
 田中日淳氏(元池上本門寺管首)は、先の大戦終結後、シンガポール、「チャンギー刑務所」で、日本人BC級戦犯の教誨師を務めた。

 『太平洋洋戦争の終結後、多くの日本兵が収容され、BC級戦犯として、不当に裁かれ、死刑に処せられた。

 部隊の中で、お経が読めるのはお前しかいない、だから行ってくれないか、というようないきさつで、チャンギー刑務所へ向かったという。

 チャンギーのPホール(死刑囚房)に毎日通うようになった。

明日のない環境の中で、なおそれぞれが立派な方ばかりで、学ぶことばかりであった。

 その人たちから私に託されるものがあった。「遺書」である。

 妻に、両親に宛てて、何としても届けてほしい、と。

 私は迷った。英国管理の下、当然、収監者と外部との物品の出し入れは厳しく禁じられていた。

 正直とは、どういうことか、という問いの前で、私は立ちつくした。

 「論語」と出会った、というしかない。たまたま開いたページに、「正直」をめぐる問答が出ていた。

 葉公という知事が孔子のところにやってきて「私の村には、他人に自慢したいくらいの正直者がいる。その者が盗んだら、子は隠す。子が盗んだら父は隠す。その中に、おのずから正直が現れる」と。

 この孔子の言葉に、はたと考え込まざるを得なかった。

 「隠す」とはどういうことか、(盗んだという)事実は隠せない。その上で、子どもが親をかばうとすれば、方法は一つしかない。

 父の身代りになること。「私がやりました」と罪を引き受ける、自分が犠牲になる、自分を捨てはじめて親をかばうことができる。

 これが本当の親子の情であり、真実の情なのだ。孔子はそのことを教えているのではないか。

 そう考えたとき、迷いが消えた。発覚したら、自分が犠牲になればいい。遺書を、魂の叫びを、禁を破っても命がけでお預かりしよう。 心は決まった。

 振り返って、私はその時、仏教の説く「真実」を学んだのである。』

 『』内、産経新聞、平成11年1月21日付 (南方収容所で学んだ真実)より抜粋。


 田中日淳氏は、85歳の時今日まで大切にお預かりしていた遺書、直筆の手紙など9点を、靖国神社「偕行文庫」に奉納させて頂いた、という。

 現在90歳を越えられて、「正直」とは何か、と考えつめた日々が蘇る。

 先の大戦で、祖国を背負って戦い、はからずも命を落とした英霊たちが、何を思い、愛する人たちに何を遺したかったのか、未だ想いを馳せるという。

 田中日淳氏は、平成22年7月、96歳で亡くなられた。託された124通の遺書を、日本に持ち帰り、遺族に渡したという。はからずも亡くなられた英霊たちの無念さと、国を想う心は如何ばかりであったろうか。ご冥福をお祈りしたい。

 
 正直とは、正義とは何か、改めて問われる。

 日本の政治は重大な岐路と選択に立たされている。菅、小沢一騎打ちの様相である。

 正義は多様である、正義は両者にあるのであろう。しかし、選択は生き方の問題ではあろうが、密室から生まれ出た”菅談話”に見るような「汝、国売り給うなかれ」、表向きの笑顔の裏に巧妙に隠された売国政策を見抜く高き見識を持って欲しい。



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