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道元禅師、最後の説法、「八大人覚」 [社会]

道元禅師、最後の説法と言われる、「八大人覚」がある。

 1252年初秋、福井、永平寺に弟子たちを集め、最後の説法として、「八大人覚」を説いた。

 「また見んと おもひし時の 秋だにも 今宵の月に ねられやはする」

 1253年8月 入滅数日前、京都 東山の中秋の名月を詠んだ辞世の歌である。

 真の大人が覚する心のお経、遺教経。これが「八大人覚」であるという。
 
 1) 少欲

「多欲の人は利益のみを追及するため苦悩が多い。少欲の人は無求無欲であるため心に憂いがない」

 2) 知足

 「不知足の者は富めりといえど心は貧しく、知足の者は貧しといえど心は富めり」

 3) 遠離

 「衆をねがう者は、衆悩を受く。衆鳥、大樹こ集まれば枯折の憂いあり」   

 4) 精進
 
 「一滴一滴の雨だれが、長い年月を重ねて石に穴を穿っていく」

 5) 不妄念
 
 「五欲(財欲、色欲、食欲、名誉欲、睡眠欲)と向き合い、毅然としてこれに左右されない」

 6) 修禅定

 「身心清浄にて、呼吸を整え、静処に端坐し、我執我慾の念を制すれば、心散漫ならず」

 7) 智慧

 「知恵ではなく、智慧である。證(さとり)に通じる叡智である」

 8) 不戯論

 「掛け替えのない時間を、つまらぬ論議に空費してはならない」


 「自己の依りどころは自己のみなり」これが仏教の根本姿勢であった。しかしこの命題は、時代の大きなうねりに耐えることはできなかった。

 八大人覚も、根本命題は「自己ぎりの自己」ということであった。しかし時代が変わり、小乗仏教から大乗仏教に移行し、自分だけ奥ふかき山中にこもり、修業すれば救済されるという時代ではなくなった。

 自己の救済よりも、他者の救済が問われるようになった。「自己ぎりの自己」を超えて他者の救済が大命題でなければならぬ、他者の大いなる存在が、自己を演釈することに気付き始めたのだ。

 命は、他者から支えられた時、初めてその存在価値を持つ。
 
 他者の不在は、自己の不在に他ならない。ジャン・ポール・サルトルもアンドレ・マルローも、「人間の条件」としたものは、紛れもなく他者の存在であった。

 我々凡人でも、せめて生きるための軸足ぐらいは、しっかりと持っていたい。 そして何より、友とともに、明日への希望を信じたい。


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コメント 13

janvierm

【八大人覚】読んでくうちに私には欠けてるものばかりで;;;;
勉強になります☆
by janvierm (2009-06-21 16:55) 

mimimomo

こんばんは^^
 睡眠欲には勝てません(__;
他者あっての自分であることはもちろんですが、
世の中には人の世話ばかり考えて自分のことがおろそかになる人も・・・結果的には他人に自分のことで迷惑をかけています。
難しいですね^^
by mimimomo (2009-06-21 18:59) 

SilverMac

欲は少なくなりましたが、まだあります。
by SilverMac (2009-06-21 22:48) 

鋭理庵

岩波書店の日本思想大系の中で「道元」の上・下二冊のみ残しました。ときどき「道元」の厳しさに触れたくなります。
by 鋭理庵 (2009-06-22 03:15) 

斗夢

仏教のことが知りたくて何冊か関係する本を手にしたのですが、
みんな中途半端でした^^。
「他者の存在」とは、他者を認めるということでしょうか?
by 斗夢 (2009-06-22 05:24) 

Baldhead1010

日本の政治の場で騒ぎ回るえせ宗教の教祖とは大違いです。
by Baldhead1010 (2009-06-22 05:44) 

pandan

八大人覚ってはじめてききました。


by pandan (2009-06-22 07:10) 

Krause

「八大人覚」、大いに心に留めます。私は、全く駄目人間!だと認識できました、mwainfo さん、ありがとうございます。
by Krause (2009-06-22 08:38) 

やまがたん

欲まみれの私・・・・><
いつもご訪問ありがとうございます☆
by やまがたん (2009-06-22 20:29) 

aya

う〰ん 深いですね!!
不妄念、左右されない自分でありたいですが
支配されています(-_-;) 特に食欲、、、、負けてしまうぅ(>_<)
by aya (2009-06-22 20:38) 

yakko

こんばんは。
歳とともに身を飾る欲がなくなりました。
まだ食欲が〜〜〜(^_^;)
by yakko (2009-06-22 21:49) 

moz

八大人覚、心のどこかにしっかりと置いておきたいと思いました。
by moz (2009-06-23 05:22) 

にすけん

 現代の悲劇は『ただ欲の赴くまま行動することが、欲に向かう自然な姿だ』と言い始めてしまったことではないでしょうかね。
 万人の欲がでたらめに衝突する社会などロクなものではありません。
 みんなで仲良く暮らすために、制御を効かせ自律を楽しむ文化的行動を目指す情操教育が重要だと思います。
by にすけん (2009-06-23 11:34) 

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