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生命の木の下で [社会]

 
 紛争の時代にあって、共存、共生の精神を、「寛容の世界」を説く。日本の免疫学者である多田富雄氏は、免疫学の見地から、生き延びるために、排除ではなく、ともに生きる寛容の精神を説く。

 タイトル、「生命の木の下で」は、免疫学の大家、多田富雄氏が残した日本への熱きメッセージだ。

 「長い闇の向こうに何か希望が見えます。そこには共存の世界、「寛容の世界」が広がっているようです」

 「生命の木の下で」から、山折哲雄氏は、「文明の衝突」ではなく「文明の免疫」、五木寛之氏は、「他民族との共存」を読み解く。世界を救済する哲学たり得るのだろうか。


 共同体社会は、他者の排除ではなく、他者への連帯を求める。中庸と寛容の精神、その反対側にあるものは、排除と報復である。

 「報復はしない、真の和解を求めた」

 名古屋大学農学部名誉教授、武岡洋治氏は、スーダン盲学校の一人の少女の言葉に強烈な感動を受けた。

 「私の目は見えないけれど、私の心は何でも見えます」 

  内戦が続き劣悪な環境下のスーダンの貧しい子供達は、栄養失調で失明する子供達が多いという。

 武岡氏は、10数年ほど前に、スーダンの砂漠化調査のため、現地調査の最中、マラリヤに感染、予防薬の副作用の為失明したという。

 入院先のハルツームの医師たちの献身的な看護のおかげで、一命を取りとめたが、失明した。その後視力は微かな光が見えるまで回復した。

 この体験がきっかけで、退官後、同志社大学で神学を学び、キリスト教牧師の資格を取得する。

 現地スーダンの人々の献身的な看護への恩返しのため、市民グループ「セナールスーダンの会」を結成、スーダンとの交流を深め、スーダン盲学校への支援を続けている。(NHK こころの時代より)

 視力を失うまでは、見えているつもりでも、実は何も見えていなかった。光を失って、はじめて見えなかったものが見えて来たと言う。

 人間は、色を視力以外の皮膚からも感じ取ることが出来ると言う。視力を失ったヘレンケラーは色彩を識別した。人間の心眼は目の見えない世界でも深い真実を見ることができるのであろうか。


 教授は、まわりの人々の殆どが、製薬会社を相手取り、訴訟を起こすべきだという怒りに対し、訴訟はせず、和解を求めた。

 報復は、報復の連鎖を呼ぶ、キリスト教伝道師という教授の深い愛と思索が、真の和解の道を説いた。

 眼には眼を、歯には歯を!を乗り越える大きな愛であろうか。

 
 「報復を超えた和解」、我々並みの凡人には到底たどり着かぬ世界なのだろうか、教授の凄まじい人生の前に見習うべき教訓は多い。

 

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