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桜の開花、そして桜染の神秘 [社会]



 毎年、桜の季節には、西行法師の「ねがはくは花のしたにて春死なむ そのきさらぎの望月のころ」が甦る。

 きさらぎは、旧暦の二月、望月は満月のことで、桜守、佐野藤右衛門さんは、桜はその2月15日の満月に向かって花を咲かせると言う。

 今年は、例年になく、桜の開花が早いというが、旧暦の如月は、今の暦で3月のお彼岸ごろなので、桜は、しっかりと季節を読み取って咲き始めたのかもしれない。


 旧暦では、一日を新月、三日を三日月、八日を上弦の月、十三日が十三夜、十五日が満月である。
  
 十九日が寝待月、二十三日が下弦の月、二十七日が二十七夜で一日の新月に戻る。

 新月から新月、満月から満月に戻るのは、平均して29.5日強だと言います。旧暦は、月の満ち干や季節を映すにふさわしい暦なのであろうか。


 「植藤造園」は京都、洛西にある。ここに、第16代桜守、佐野藤右衛門さんの桜畑があるという。

 名前からして美しい桜(楊貴妃、一葉、太白、御衣黄、御車返、鬱金など)が常時10万本以上植えられている。

 桜を愛し、桜と対話し、桜の後継ぎを分けてもらい、80歳を超えても、なお全国を元気に駆け巡る藤右衛門さんは、歳月に立ち向かい生きてきた桜の花は、樹齢とともに色気から色香を醸し出してくるという。

 桜を見るときは、ありがとう、来年もがんばって咲かせてや、と桜の幹を優しく叩いてやるという。

 桜へのあふれる想いと自然との共生を胸に、全国の桜と対峙し、へき地の桜を訊ねる時は、「来年また会いに来るからな」と言い別れるという。



 善(よ)し悪(あ)しの人のことをば言ひながら わがうへ知らぬ世にこそありけれ」(西行)


 花と月をこよなく愛した孤高の歌人とも言われた西行法師...

 恋を詠む...
 「憂き世には留(とど)めおかじと 春風の散らすは花を惜しむなりけり」(西行)

 辞世を詠む...
 ねがはくは花のしたにて春死なん そのきさらぎの望月(もちづき)の頃(西行)


 西行は平安末期の動乱の世に、300を超す恋の歌を詠み、没後、万人の心に響く歌を詠んだ歌聖と言われた。 
 
 謎多き放浪と沈黙の歌人、西行を描いたものに、能、落語、相撲甚句などがある。 白洲正子氏が西行法師の生涯に取り組んだ「西行」がある。 西行が詠んだ多くの歌からその生涯を読み解いた一冊である。


 草木染に、「桜染」がある。淡い桜色の彩色は、奥ゆかしさと優雅さを合わせ持つ日本人の心の原風景であるのかも知れない。

 この桜色は、花が咲く前年の9月ごろに、桜の木の枝や幹の樹皮の下に蓄えられるという。来年の開花への準備、用意周到な蓄えである。

 この自然界の生成の仕組には驚嘆すべきものがある。 人の夢や志も身体の中に蓄えられ、成長とともに熟成し、やがて開花するのも、長い努力と試練の時間が必要なのだ。


参考図書

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